2011年10月06日

郡山ホームページ作成 電力料金値上げの前に……「ありがとう」を伝えてほしい

2011年7月1日から発令されていた電力使用制限令が、東日本大震災の被災地などで9月2日に解除された。東京電力と東北電力管内は9月9日に全域で解除される。解除日が予定より2週間も繰り上げられたのは、企業にも鉄道会社にも、めぐりめぐって消費者にも朗報である。

 前倒し解除のワケは、企業や家庭全体の節電実績が7月=前年同月比20.4%減、8月=同21.9%減(28日までの実績)と目標の15%を大幅に上回ったから。盆明けから一気に涼しくなったせいもあるが、何よりも1社1社、ひとりひとりの節電の取り組みがあったからこそ達成できた。家庭では去年に比べて2〜3割減ったという世帯も多い。

 節電達成のウラにはみんなの大小長短の知恵や努力があった。後世のためにもランダムに挙げてみよう。

・エアコンから扇風機へ(本連載ではGreenFanも取り上げた)
・照明器具の消灯や取り外し(暗い街、暗い地下鉄に慣れた)
・エレベータの間引き(イラチはイカンと自分をなだめた)
・16時終業(立ち飲みがにぎわった)
・節電クールビズ(やっぱりイマイチでした)
・節電ポスター(秀逸なものが多かった)
・製造業の平日休業、土日操業(ごくろうさまでした)
・電車の間引き運転(混んだときはつらかった)
・自販機冷却の輪番停電(冷えていないコーラなんて……)
・緑のカーテン(ゴーヤはどうも好きになれない)
・浴衣で出社する女子(もっと増えてもよかった)

 節電対策ではないけれど、東北の野菜、福島の産品も買った。みんながガマンし、投資をして、ボランティアもして、危機を乗り切るために手を差しのべた。だから1974年以来、37年ぶりの電力使用制限令は短期で解除された。

 ところが東電は電力料金を15%も値上げ申請するという。1家庭平均月額1000円のアップ。燃料費の高騰、電力事業収支悪化で仕方ないとは思う。1974年のオイルショック時の50%値上げよりはマシ。でも恩をあだで返すというか、手を差しのべてかまれたような……。

 東電に足りないと思うことがある。伝わってこないものがある。それは“感謝”である。

●正しく伝えようとしているが……

 東電のホームページを見てみよう。トップには社長名で、被災地へのお見舞いと全力で収束する決意が書かれている。被災した福島第1、第2原発の状況を伝えるバナーと問い合わせ先、でんき予報と節電の知恵と続く。

 「電力の使用状況グラフ」は当日の電気使用状況を伝える。「節電の方法について」をクリックすると節電アイデアやその効果検証、電気製品の使い方、法人事業者向けに業種別節電まで紹介がある。

 ところが「過去の電力使用実績データ」を調べると、CSVデータしか表示されない。1月1日から現在まで「1時間ごとの正確な消費電力数値」の羅列。ある時点の昨年対比を見たい場合、両年データをそれぞれExcelにコピーして、割り算して比較するしかない。それを……消費者にさせるの?

 福島の事故対策は不断に継続されている。災害補償で多くの社員が駆り出されている。本社もリストラを進める。世論の攻撃にさらされて、貝のようになりたい気持ちも分かる。でも、もう1つ足りない。

●ひとりひとりの感謝が売り上げにつながる

 同じ国策会社でも、2010年1月に倒産したJAL(日本航空)の再建姿勢にはそれがある。

 JALでは機長やキャビンアテンダント、整備士たちがさまざまなイベントで消費者に接する。まず「折り紙ヒコーキ教室」では、子どもたちに現役機長が折り紙ヒコーキの作り方を教えてくれる。

 8月下旬の広島県神石高原でのイベントでは、現役パイロットによる航空教室(飛行機の飛ぶ仕組みの話)やJAL制服試着(残念、おこさまのみ)を開催。JALでは社員220人が「日本折り紙ヒコーキ協会」の認定指導員資格を持っている。

 また「そらいく」イベントは、温暖化の進む氷河や二酸化炭素を出すシベリアの森林火災の様子などを、現役パイロットが上空1万メートルのコクピットからの写真で説明する。現役キャビンアテンダントの機内アナウンス実演もある。ヒコーキもそらいくも、各地で出前開催中。

 徳島空港では駐機場でラジオ体操イベントを開催。普段立ち入れない広々としたエリアで体操をするのはいい。釧路では有効期限が切れた航空路図を使って、手作りのブックカバーを配布した。これは欲しかった。

 これらの中には倒産前から実施してきたものもある。だが、倒産後にJALに搭乗した時、機内には明らかに温かさと感謝が満ちていた。「再建しよう、好感を持ってもらおう」が伝わってきた。だからこそ2012年度第1四半期は急回復の黒字。経営者が稲盛和夫氏に代わり、社員が変わったのだろう。ひとりひとりが、ひとりひとりにありがとう。JALにはそれがある。

●ありがとうベースのマーケティング

 残念だが東電からはそれが伝わってこない。補償活動で忙しくても、Facebookに企業ページを開設して、各地の節電活動を伝えたり、消費者に書いてもらって、それに対して「ありがとう」を言うことはできる。事実やデータだけのホームページより温かい。ハコモノ展示でなく、外部委託でもない、社員ひとりひとりによる電力教室をどんどん開いてほしい。感謝を見せてほしい。

 一般企業でも「感謝をどう伝えるか」はこれから重要なテーマである。それは「ご愛顧感謝」の“消費者還元”や「上得意客ご招待」の“顧客セグメンテーション”ではない。お得と差別化というマーケティングの王道が薄れたとは言わないが、震災後の消費者心理のド真ん中にあるのは「貢献と感謝」である。

 ソーシャルに目覚めた消費者は、貢献し応援し感謝されたい。従来のイメージ重視コミュニケーション戦略も話題先行型イベントも、もはや響かない。ありがとうからマーケティングを始めないと伝わらない。企業活動に心から共感してもらうために、消費者とともに行動する姿勢が欲しい。ウリはその後自然に付いてくる。ありがとうベースのマーケティングは震災からのありがたい教訓である。

【郷好文,Business Media 誠】

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